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西野 :普通に考えると素材に防炎加工を施したりすることになりますよね。強化段ボールにも防炎加工は可能なんです。しかしそうすることによって、強化段ボールならではのせっかくの質感が変わってしまう。それに、使用する防炎難燃材にもよりますが、大体はぶつかったらひびが入るような、硬い素材になってしまうんです。そして最も悪いのは、リサイクルできなくなってしまうということ。だから我々としては、難燃防炎加工は極力したくないわけです。
理想を言えば、強化段ボールを製造する初期の段階で、防炎加工を施すことができればリサイクルも可能だし、質感もおそらくほとんど変わらないんです。そういうやり方で、撥水加工を施した強化段ボールが最近製品として流通するようになってきました。なのでやろうと思えば出来るんですが、そうやって素材を新しく作るとなると、膨大なロットを発注しなくてはならない。我々がそこまでやるのは無理です。
しかし仮に、我々がブースを作る側ではなくて、ブース代を払っている出展業者だとしましょう。変な話ですが、そうするとこのブースは商品だから、という理由で設置が許されるんですよ。それともうひとつの解決方法は、すぐ移動できるようにするということですね。
そして一番手っ取り早いのは、展示会の主催者側が認めること。どうしてもこの素材でブースを作りたいということを主催者側が強く言った場合には、消防署もノーと言わない場合が多いんです。この間5月に大阪のATCで7千平方メートル程度の規模の展示会があったんですが、その展示場什器やブースのほとんどすべてを我々が、段ボールを使って製作しました。防炎難燃加工は一切施していません。消火器をたくさん設置するようには指導されましたけどね。
この時は主催者側に、徹底的にエコでやるという方針があったんですね。まずゴミを出したくないと。まさにそれは我々じゃないと実現出来ないことなんですよ。
私たちの手掛ける展示会は毎回そうなんですが、ブースごとリサイクルするというのが売りなんです。ゴミを一切出しません。厳密に言えば、荷崩れ防止のラップテープだけはゴミになりましたけど。そのうえ、釘もビスも何も使わずに短時間で組み立てられます。もちろん撤収も驚くほど短時間で出来ます。ATCではブースの輸送用のパレットまでダンボールで作りました。
LTL:その展示会では、展示会の専門業者さんの設計図に合わせてブースを作られたんですか?
西野 :そうです。理想を言うと、デザインの段階から我々が入っていく方が強化段ボールの特性が生かせるんですけどね。設計時間も短縮できますし。そうすれば確実にもっといい展示会が出来ると思います。
LTL:消防法の話しに戻るんですが、百貨店で化粧品のブースなどを作る場合は、下地を木で作ってしまうことが多いんですが、あれはブースごと可動家具です、ということで、消防法を通しちゃうんですよね。ブティックなんて什器も商品も可燃物だらけなのに、可動もしくは商品だからOK。消防法自体、おかしな面がたくさんあるんですよね。その辺をうまく切り抜ける方法を考えれば、これからまだまだ、段ボールの建材としての用途が広がる余地はあると思います。
西野 :そうですね。床も壁もすべて段ボール、ってとこまで行くのはなかなか難しいんですけど。いずれにしても我々は、段ボールをプラスチックとかスチールとか木に完全にとって変わる素材だとは思っていません。それぞれの持つ長所短所がありますからね。
さっきの大阪の展示会みたいな、大規模なケースはそんなに頻繁にはないと思いますが、個々のブースとしては、これからもっと強化段ボールの使用例が増えていくと思います。実際に、今年の12月に東京で『エコプロダクト2001』って言う展示会があるんですが、そのうち2ブースの発注がすでに入っています。
昨年の『エコプロダクト2000』でも、展示終了後のごみをいかに減らすか、と主旨の中でうたってはいたものの、結局出てるごみの量は、通常の展示会とほとんど変わらなかったと思いますよ。300くらいのブースがありましたが、本当に一切ゴミを出さなかったのは、私たちが作ったブースだけでしょう。他のブースではいろいろ再生紙使ってたりしましたけれど、見ていてどうするのかなって思いましたよ。だってごっちゃじゃないですか。
LTL:主な部分に再生素材を使ったところで施工するのにステープルやビスを使ってしまうとそれを一個ずつ外して分別しない限り、結局産業廃棄物として捨てるしかないんですよね。きっとちゃんと分けてなんかいないだろうなあ。
西野 :環境展なのに環境にそぐわないないことしてたら本末転倒ですよね。主催者側にも、もっと考えて欲しいですね。
LTL:再生素材って、『なんとなく地球に優しそう』みたいな、イメージを拝借するだけの安易な手法の中で使われてしまっていることが多いと思うんです。本当にどこまでリサイクルするのかってことは、実はあんまり考えられていないんですね。
そういう我々も、なるべく再生素材を仕事で使いたいとは思うんですけど、工期や予算の関係で、なかなか解体時に分別するところまではやれない。強化段ボールに対しては、そんな私たちの罪悪感を画期的に軽減してくれる素材かもしれない、という期待があるんです。
西野 :それは確信していますよ。間違いなく積極的に使うべきだと思います。
実のところ、展示会やショップの什器などの仕事でお声掛け下さる業者さんの中で大半の方が、まずコストを下げたいから段ボールで、と言われるんです。せめて環境にやさしいから、と言ってくれればいいんですが。そこに環境への配慮はまったくないんです。悲しいことだと思います。
LTL:重要なのはクライアントの姿勢ですね。デザイナーとしては、この素材を使う意味を正しく理解してくださるクライアントにしか提案したくない。エコロジカルなイメージや、目新しさを安易に演出するだけの目的に使うと、結局すぐにゴミになってしまって本末転倒な事態に陥りますから。
西野 :そうですね、はじめは面白そうだなっていうのから入ってもいいんですけど、最後に行きつくところというか、価値観が同じ人じゃないと難しい。多少高くても、環境にいいから使うっていうのが世界では常識なんだけど、日本ではまだまだそうした意識が低いですね。
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