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段ボールという素材に対して誰もが抱いている印象は概して『弱くて安価な箱』といったものでしょう。しかし原宿にあるDaN
DiN DoNのオフィスにはそうした段ボールに対するイメージを大きく変えてしまうような驚くべきサンプルや製品が整然とストックされ、その多くはオフィスの中で実際に家具、あるいは建材として使用されています。
2001年6月にはじめてDaN DiN DoNのオフィスを訪れたデザイナー・love the life(勝野明美+ヤギタカシ)は、そこで段ボール(中でも強化段ボール)という素材の持つ可能性と、その極めてリサイクルに適した特性に大きな衝撃を受けました。デザイナーとして今最も“使いたい”と思わせる素材であり、一消費者としてはすぐにでも生活の中に取り入れたい製品である段ボールについてさらに詳しい情報を得るべく、love
the lifeの二人はDaN DiN DoN代表・西野哲朗氏への直接インタビューを行いました。
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西野哲朗 プロフィール
1979年 大学卒業後日用品の専門商社に入社、主に新入社員教育を担当後
1986年に人材派遣会社にヘッドハントされる。人材派遣のフランチャイズ展開
並びに、地方直営店の立ち上げを担当する。その後B&B(企業内起業)を担当する。
1993年に同社退職後、千代田区内にて飲食店を経営の傍ら、
1997年からは、組織改革に伴うQCコンサルタントを請け負う。
2000年から、ダンボールを素材にしたデザイン・製造事業を計画し事業化の準備を始める。
2001年に組織を法人化にし、ダン ディン ドン有限会社を立ち上げ強化ダンボールを素材にした
商業施設什器・家具・遊戯具のデザイン、制作に本格参入する。
love the life プロフィール
商業施設空間のデザインとアートディレクションを中心に様々なクリエイティブワークを手掛ける。
1997年に活動を開始。メンバーは勝野明美とヤギタカシの2名。
ホームページ:http://www.lovethelife.org
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love the life(以下LTL):ダンディンドンの業務内容としては強化段ボールを素材として使用した家具・ハウスウェアプロダクトのデザイン・製作、また展示会・商業施設などのデザイン・施工などがあるわけですが、まずこの『強化段ボール』という耳慣れない素材が一体どんなものなのかについてご説明いただけますでしょうか。
これは構造的にはいわゆる段ボールと同じですよね。両面に板紙があってその間に波型の部分が挟まっていて...。
西野 :フルートですね。波形の部分は『フルート』っていうんです。で、両面の茶色い板紙を『ライナー』っていうんですが、現在このライナーの部分だけがアメリカから輸入されているんです。フルートの部分は国産で、それを組み合わせたかたちで日本のダンボールメーカーさんで造られているものを使用しています。
このライナーの部分にはバージンパルプと言って、木材から最初にとれる繊維質の一番長いパルプを原料として使用しているんです。中のフルートは再生含有。だからライナーの部分と比べるとかなり白っぽくなっているでしょう?アメリカにはフルートまでバージンパルプを使用した強化段ボールがあって、それはここにある強化段ボールよりもさらに丈夫です。将来的には僕たちはそれを使いたいんですが、木に近い硬さですから加工がちょっと難しい。現在その入手については価格面を含めて検討中です。
日本にもバージンパルプ製の段ボールを作っている会社はあるんですが、我々はこのアメリカのメーカーが製造しているライナーの持つ独特の風合いと強度とが一番気に入っているんですね。
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LTL:なるほど。段ボールの素材にもいろいろあるんですね。
西野 :そうですね、国産の強化段ボールは全体に色がもっと白っぽいんです。質感が全然違う。このアメリカ製のライナーが茶色っぽいのは原料の木の中にある『リグニン』っていう成分が多く含有されているからなんですね。
LTL:リグニンというのはどういった特性のある成分なんですか?
西野 :紫外線に反応して日焼けします。色が変わっちゃうのは問題じゃないかとよく言われるんですが、これは全体をもう一度紫外線に当てると元の色合いに戻るんです。
つまり強化段ボールというのは生きている素材なんですね。いわゆる『段ボール』とは、まったく別物と言ってもいい。そこに現在の我々の苦労があるわけですよ。一般的には段ボールと言うとスーバーの裏に積んであるようなものと同じだと思われてしまいますから。
ほんとは『段ボール』っていう名前自体をなんとかしたいんですよ。インターネットでアイデアもらったりできると面白いんですが。
LTL:英語だと『コルゲーテッド・ペーパー』ですよね?
西野 :そう。あとは『カード・ボード』とか。日本で『段ボール』と言うとどうしてもイコール『安物の箱』になってしまう。
LTL:そもそも強化段ボールはどういった経緯で開発されたものなのでしょう? |
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西野 :もともと、段ボールのフルート(波形の紙)というのは、輸送・包装のために作られたものではなくて、帽子の汗を取るためにイギリスで特許がとられたものなんだそうです。1856年の話です。その後、アメリカで量産する方法が考えられて、段ボールが世界中に広まったんです。明治の終わり頃(1900年頃)には、日本でも生産が始まっていたそうですよ。
強化段ボールというのも、同じくアメリカで開発されたもので、”重い貨物をいかに軽い箱で輸送するか”、それを追求した結果考案されたものなんです。軍事用にも随分使われたらしいですね。
最近の用途としては、登山家の方で高山に登る時の荷物運搬用に我々が使用しているのと同じ製造元の強化段ボールで箱を作っている方がいらっしゃると聞いています。やはり丈夫で軽いという部分で評価されているんですね。それにいらなくなった箱は現地で焼却できますし、紙ですから生分解するわけです。
いまヒマラヤの方で登山家の捨ててゆくゴミのことが随分問題になってるでしょ?有名な方が清掃登山を行ったりとか。
LTL:エベレストに放置されているゴミのうち三分の二近くがメイドインジャパンだったというニュースがありましたね。
西野 :そうそう。あまり知られていないんですが、そうした問題を解決する意味で強化段ボールが近年随分使われるようになっているんです。運搬用だけでなく、現地で空の箱を積んでそこにシートを張るとテントになるとかいろんな使い方があるので重宝されているらしいですよ。
あとは最近NASAが宇宙での実験として日本から鯉を持って行ったんですが、その時スペースシャトルで宇宙に鯉を運んだ箱もこの強化段ボールだったんです。NASA指定。一般的には車のシートやエンジンを輸出するときにも使われていますし、テレビの撮映クルーがカメラを入れる箱として使われているという話しも聞いています。とにかく、強化段ボールはかたちが自由になりますから様々な用途が考えられるわけです。
しかも段ボールはリサイクルの王様と言われている素材なんです。それは木箱1箱から段ボール箱が13箱程できると言われています。また、リサイクルが可能であるとか環境にやさしいとか言われる素材は他にもたくさんありますけど、そうしたものの多くは実のところたった一回だけしか再生できません。しかし強化段ボールは質の高いバージンパルプを使用していますから数次にわたって再生が出来る。リサイクル性においてこれに変わるものは当面無いだろうと言われているくらい優れているんですね。梱包材や緩衝材としては木箱なども普通に使われるわけですが、ああいったものはローコストで作るために留め金や釘で組み立ててあって、そういったものが非常に分別しにくいために結局リサイクルするのが難しくなっている。
LTL:そうするとこの強化ダンボールという素材は実は木材をそのまま使うよりもむしろリサイクルがしやすいと。
西野 :不思議ですよね。つまりこの強化段ボールはリサイクルの一番最初の段階のものだと言ってもいいんじゃないでしょうか。
これだって木を切って作ってるじゃないかと言われる方も随分居るんですけど、北米の製紙会社というのは日本に住む我々からは想像を絶するような広大な山を持っていて、そこで伐採する面積と植林する面積を何十年スパンで完全に計画している。無計画な伐採はしてないわけです。
古紙1トンを再生すると850キログラムの再生紙になると言われています。それを木に換算すると下径で14センチ大体樹齢で20年から30年の木を20本ほど守ったことになるわけです。さっきの木箱みたいに木をそのまま使って結局産業廃棄物になってしまうのとは大きな違いですね。同じ木からできているのに。 |
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